ヒミツの旅をしよう~秘密の非密スポット

この記事は、はんドンクラブアドベントカレンダー9日目の記事です。 adventar.org

アドベントカレンダーにかこつけてようやく一つブログの記事が増えました。おはこんばんちはすてらです。

コロナに振り回された2020年ももう終わろうとしていますが、旅行好きには中々厳しい一年でした。

来年中頃までGoToトラベル施策自体は延長されるようですが、コロナ状況やご時世的にはどうなっているでしょうか……感染状況が落ち着いたとしても、なかなか「密」なところへの旅行は気が引けますよね。それなら自動車ドライブを中心に組み立て、密集地域への観光を回避した非密の旅行はどうでしょうか!

ということで、ぼんやり距離バグ*1ドライブしたときに個人的に「いいな」と思った非密のスポットを3つ、つまり三非密*2を、いかがでしたかブログ風に書きなぐっておきます。今後の非密旅行計画のインスピレーション源にでもなったら幸いです。


①電柱の無くなった江川海岸(千葉県木更津市

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概要

江川漁業協同組合

川崎から東京アクアラインを渡って木更津金田IC、密が想定されるアウトレットには目もくれず県道87号を南下、木更津の自衛隊基地の外縁をなぞるように東京湾に向かうと二つほどある潮干狩り場の内の一つが「江川海岸」です。ここでは、盤州干潟・東京湾と工場地帯をゆったり眺めることができます。*3

海上に立つ電柱は、映える。いかがでしたかブログにもそう書いてある。

ここは実は潮干狩りとは関係のない内容でも有名なスポットで、海上の監視小屋へ電力を送電するために海中に立っていた電柱と海の情景が、「千と千尋」の海上線路だの、日本のウユニ塩湖だの、歯の浮くような二つ名が付いて各種メディアで喧伝され、三脚やジンバル付きiPhoneを装備した観光客に大人気だったようです。

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ポッキー状の何かが残るのみ
しかし今はその海中電柱が監視小屋もろとも撤去されてしまい、海岸には柵が設置され、現在は二つ名通りの”映える"写真は撮れない状態にあります。つまりもうインスタントなお手軽映えスポットではなくなってしまったのです。

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電柱は抜いておきました。いかがでしたか?
キュレーションサイトによってはとっくに撤去された後の2020年の記事でも未だに海中電柱が絶景!とか紹介していたりするせいか、現在も電柱を期待して来る人も若干いるようですが……わたしが訪れた時に、同じように海を見に来たであろう人は片手で数えるほど。

でもこんな短いSNSの歴史の中でこういう"映え"を取り上げられた"映えスポット"って、何か風情を感じませんか?わたしは感じます。

電柱がなくなっても

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現役だからこそ風情がある
電柱がなくなったとはいえ、年期を感じさせる錆びた鉄格子、いつから絡まっているのか分からない柱のトラロープ、君津の工場地帯と対比するように東京湾越しで煌めく横浜のビル群の情景など、柵に肘をついて海を眺めるだけでレトロで感傷的な気分になれる要素は揃っています。夕暮の時間帯ならなおムード良し。 f:id:maestra:20201208182348j:plainf:id:maestra:20201208182400j:plain

元々が潮干狩り場として整備されている場所ですから、海辺には広い空間があります。工場の夜景に火が灯るのをゆったり待つのもいいなと思いました。

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無電柱化されていない久津間海岸
ちなみに、江川海岸のおとなり、「久津間海岸」にはまだ海中電柱が立ったままになっています。 あなたがもしここで東京湾の夕陽に心洗われ善行を積みたくなったのなら、電柱撤去の告知文に絶望しているアベックにとなりの海岸のことを教えてあげてください。

★おすすめ距離バグドライブコース

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木更津アウトレットのアレ
房総半島一周など。木更津アウトレットのついででも訪れやすい距離です。日の入り時刻前に到着するよう調整すると綺麗な夕暮の景色が望めます。

広大な盤州干潟で無を取得するなら干潮の頃を見計らってくるのがオススメです。写真映えもするでしょう。ただ、日没を見てその足で木更津金田からアクアラインで帰ろうとしないこと。渋滞に巻き込まれてせっかく取得した無が無に帰します。

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②二度被災した震災遺構・震災メモリアルパーク中の浜(岩手県宮古市

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概要

岩手県宮古市 震災メモリアルパーク中の浜

宮古市中心部から三陸自動車道を使わずに国道45号を北上、一の渡駅があるあたりで海岸方面に向かっていくと、トンネルを過ぎたところで道の駅然とした綺麗な駐車場が出現します。ここが東日本大震災で被災した建造物を震災遺構として公園内に整備されている「震災メモリアルパーク中の浜」です。

キャンプ場の遺構として

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柵が設置されていない炊事場跡
先の大津波で被災する以前ここはキャンプ場だった場所で、建物が完全に消失せず残っていた「炊事場」「トイレ」が震災遺構としてそのままの状態で残されています。震災遺構の柵内の見学にはガイドへの申し込みが必要な場合もありますが、ここでは遺構に対してかなり近寄ることができ、炊事場跡地は剥き出しの鉄筋に触れることもできました。

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間近まで寄れるが中の光景はかなりキツい
特にトイレの遺構は圧巻で、基礎や屋根が崩壊し、内容物は悉く破壊され押し流され、人為では到底あり得ない形で目の前に転がっている様は、どんな写真よりも強く津波被害の凄惨を語り掛けてきます。

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ちょっと高台に上がったところでダメなことが分かる
震災の瓦礫で造成したという「希望の丘」に登ると、ちょうど目線の高さが当時押し寄せた津波の水位が来るようになっています。個人の想像力に委ねられる脳内セルフARですが、驚くほど上部まで水が押し寄せたことが見て取れます。

増えていた”災害の遺構”

さて、このように震災遺構が整備されている中の浜ですが、公園入口には津波に破壊された堤防を材料にした石碑があるとあります。

f:id:maestra:20201208011546j:plain 最初の写真がそれを写したものですが、「被災したコンクリート」を使っているとはいえ、雰囲気がありすぎるというか、そのまますぎるような…

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出典:宮古市 https://www.city.miyako.iwate.jp/kanko/nakanohama.html
宮古市のHPの写真と見比べると瞭然、正確な情報源は見つからなかったのですが、どうも2019年台風19号による大雨被害で公園入口付近の地盤が崩れ、石碑が埋もれてしまったとのこと。 訪問時は19号の上陸からかなり時間的に経過していたはずですが、2つの震災遺構のように、本当に”被災したそのままの状態”であるように見えます…
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震災の石碑が被災して「また」埋もれている姿

石碑が倒れているだけならまだしも、崩壊しつつある道路が剥き出しになっているため、公園施設としてはかなり危険な状態のはずです。宮古市や省庁の施設紹介HPにも、まるで忘れられているかのように、ここの状況は語られていません。現地で頼りない柵が置かれているだけ。

改めて震災被害の凄惨さ、そして様々な要因によって復興が一筋縄ではいかないことまでが、ここに象徴されているようで複雑な心境になりました。

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観光案内にも一切出てこない
この地は鉄道駅やバス停、三陸自動車道からも離れており、また宮古市の遺構としても付近に道の駅がある「たろう観光ホテル」の方が観光資源として万人向けであるためか、ここを訪れる人は本当に少ないようです。

遺構を独り占めする、というと表現が適切でないような気もしますが、付近には住宅街もありませんので、本来部外者であるいち旅行者が、震災の爪痕を静かに焼き付けていくにも適する場所だと思います。

★おすすめ距離バグドライブコース

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かもめテラスのカフェはおすすめです
三陸ならば国道45号を使って下道をドライブしましょう。仙台から八戸まで走破しても500kmもありません。どこかで1,2泊すればさらに十分な観光の時間を作ることができます。

宮古以外では、個人的には気仙沼~大船渡をゆっくり走ることをオススメします。海沿いでは感覚が麻痺する程に「津波浸水想定地域」の標識を通り過ぎ、整備された震災遺構ではない、”震災の遺構”そのものも目に飛び込んできます。市街地を走っていても不自然に広く平らで整理された何もない区画が出現します。震災から10年経ちますが、被災地の復興はずっと続いていることを身を以て感じられるでしょう。

大船渡ではさいとう製菓*4の総本店に併設する「かもめテラス」に寄って一息ついてください。かもめの玉子ガチ勢の一押しスポットです。

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③野鳥と鹿の聖域・春国岱(北海道根室市

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概要

根室市春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター

根室市市街地から国道44号を南西に20分ほど、ラムサール条約にも登録された汽水湖の風連湖には、春国岱(しゅんくにたい)という砂洲があります。 原生公園としていくつかの散策コースが整備されているほかには、全く人の手が入っておらず、トレッキング気分で野生動物や自然を満喫することができます。

砂洲に凝縮された地形と生態系

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木道の起点
春国岱には幅1.5車線程の橋が架かっており、車で駐車場に渡ることができます。駐車場から伸びる砂浜上に設けられた木道が「ヒバリコース」の始点で、水面沿いに木道をひたすら歩いて行きます。

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砂浜に沿う木道
砂洲として形成された春国岱には、砂丘の上に森林が形成されていたり、三重に囲まれた砂丘の間に湿原や草原があったり、この島には北海道における「山・渓谷」以外のほとんどの種類の地形が凝縮されているとあります。

f:id:maestra:20201208184621j:plain 実際歩いているだけでも、海岸付近にいるはずなのに足元には湿地が広がり、横には立ち枯れ林や草原があり、さらに木道の奥の方には鬱蒼とした針葉樹森林があり……となんだか整備された植物園に来ているよう。

望遠レンズでないのでまともに撮影できないのが残念ですが、見渡してみればぽつぽつと鳥がいるのが確認でき、湖畔の説明板やネイチャーセンターの解説にある「野鳥の聖域」の名もなるほど納得という感じです。

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たぶんアオサギかなあ

サバンナに取り残された気分に

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木道が消失、湿原を歩く
さて、木道を進んでしばらく行くと「キタキツネコース」「アカエゾマツコース」などへの分岐が現れます。ヒグマ注意の看板を横目に渡っていくと、今度は木道がなくなってしまいました。

一応ロープでコースは分かりますが、どう見ても人間の踏み跡よりシカの踏み跡の方が明瞭。

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獣道が先か遊歩道が先か
立ち枯れ林とはいえ見通しが悪いところもあり、ヒグマの遭遇に怯えながらそのまま先に進みキタキツネコースの終端に付くと、広大な湿原と草原の景色が開けます。 f:id:maestra:20201208193245j:plain
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中央奥でダラダラしてる鹿、見えますか?
エゾシカがその辺で寛いでいる姿を見ていると、まるでサバンナに一人取り残されたかのような気分です。

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×:サバナ ○:亜寒帯湿潤気候
北海道で原生林のトレッキング観光というと、知床五湖遊歩道が有名ですが、あちらは観光客の入場が時間帯や講習の受講によって厳格に管理されており、また観光客自体も多め。ヒグマの生息地ですしね。

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知床もいいところです。前日行きましたから分かります

一方こちらは、歩道はしっかり整備されてはいますが、植物を観察するもよし、野鳥や鹿を撮影するもよし、散策の楽しみ方(と責任)はすべて個人に委ねられている印象で、何より観光客が少なく、静かに自然に溶け込んでみたいという好事家の欲望を満たすにもとても嬉しい環境です。

わたしはドライブのついでで寄ってしまったので1時間も滞在できませんでしたが、次来る機会があれば、ガッツリここでの時間を割いて、野鳥撮影装備を買い揃えてリベンジしたいです。

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アカエゾマツコースにはルリビタキ等の小鳥もいるらしい。まあこのレンズでは撮れない

★おすすめ距離バグドライブコース

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道の駅の割とガチめなカニと望遠鏡
本土最東端(納沙布岬)回遊など。根室までは釧路から国道44号で200km、基本的に長距離ドライブでのアクセスになることを考えると、隣接する日本最東端の道の駅「スワン44ねむろ」は格好の休憩所となるでしょう。

道の駅から屋内の望遠鏡で風連湖の渡り鳥を見たり、充実した売店・レストランで花咲ガニなどを楽しむことができたりもします。カニは高いけど。

春国岱を本格的に見て回るなら、春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンターのしっかりした展示物や、ガイドをつけてもらうとより楽しめるのではないかと思います。

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さいごに

いかがでしたか!?

えらく東日本に寄った三選となってしまいましたが、それはまだまだわたしが西日本、特に大阪から西にあまり行けていない証左でもあります。行きたい。長距離ドライブやニッチスポットが好きな皆様もそうでない方も、非密の情報共有いただけると嬉しいです。いま話題のMastodonサーバ、はんドンクラブでお待ちしています。

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積丹にも行きました。釧路の前日に。
わたしが春国岱を訪れた時は、根室以外にも一週間ほど北海道距離バグ旅行をしたということもあり、いつかはちゃんとした旅行記にしたいな~と思っています。ただ過去の旅行記を書き上げるよりも、やはり新しいところに行きたいという思いが……来年こそ自由な旅行ができる世の中になることを願うばかりです。

*1:距離感がバグっているの略。高速道路を使用せず500km進んだり、運転時間のために食事を忘れたりするなど、極端に「移動」に偏重した旅行のこと。

*2:正直これを言いたかっただけというところがあります

*3:もちろん春~初夏は潮干狩りシーズンの為、海を見るならそれ以外の時期に来場する必要があります

*4:三陸銘菓「かもめの玉子」などを製造する大船渡市の菓匠。形の似る東京の「ごまたまご」製造元もここの系列です。